会計事務所の仕事は、帳簿を入力するだけではありません。資料回収、残高確認、決算・申告の支援、経営者への説明などを通じて、顧問先が税務と経営の判断に使える数字を整えます。どの業務を受託するかは、事務所の専門分野と顧問契約によって異なります。
未経験者が仕事内容を理解するには、税理士が判断する部分と、職員が補助する部分を分け、毎月・決算期・年間の3つの流れで見ることが近道です。事務所経営者にとっても、担当者の役割とレビューの見直しに使える形で整理します。
会計事務所と税理士法人の違い:名称だけで業務は決まらない

「会計事務所」は、会計・税務等を扱う事務所の名称として使われます。一方、税理士法人は税理士法に基づく法人です。税務業務の担当者や提供できるサービスは、屋号だけでなく、資格者の登録と受託内容を確認する必要があります。
税理士法人の法律上の「社員」は、一般的な会社でいう従業員と同じ意味ではありません。社員は税理士でなければならず(税理士法第48条の4第1項)、業務を執行する権利と義務を負います。一方、税理士法は税理士業務を行うために使用人その他の従業者を使用することを前提に監督義務を定めており(同法第41条の2)、税理士法人に資格のない補助職員を雇用できない、という意味に受け取らないよう注意が必要です。社員税理士と、雇用される職員を区別して組織図を作りましょう。
また、法人化すれば仕事内容が自動的に広がる、必ず節税になるというものでもありません。今回は法人化の有利不利ではなく、実際に誰がどの業務を担当するかに焦点を当てます。
税理士と職員の役割:補助作業と個別判断を分ける

税理士業務は、他人の求めに応じて税務代理・税務書類の作成・税務相談を業として行うことです。会計事務所の職員は、税理士の指揮監督の下で資料整理や入力等の補助を行いますが、独立して税務判断を受託することと同じではありません。税理士でない者が税理士業務を業として行うことは、法に別段の定めがある場合を除き制限されています(税理士法第52条)。
例えば、入力担当者が領収書を整理する場合も、事業との関係が不明な支出を自己判断で処理せず、質問事項として担当税理士へ回す運用にします。担当者を決めるだけでなく、誰が判断し、誰が最終確認するかを明確にすることが品質管理につながります。
公認会計士による監査・証明は、決算書作成や税務申告の代行とは別の業務です。資格と仕事内容の詳細は「公認会計士とは?仕事内容」の記事をご覧ください。
月次業務の流れ:資料回収から試算表の説明まで

第一に、通帳、請求書、領収書、売上・給与等の資料を回収します。提出方法と期限を決め、資料がない取引と、まだ回収していない取引を区別します。第二に、仕訳入力や連携データの処理を行い、重複、計上漏れ、対象月の誤りを確認します。
第三に、預金・売掛金・買掛金・借入金等の残高を照合します。例えば売掛金の残高が増えていれば、売上増によるものか、回収遅延かを請求・入金明細で確認します。数字の増減を理由なく「問題なし」としないことが大切です。
第四に、不明点の回答と担当税理士の確認を反映して試算表を整えます。第五に、前月・前年・計画と比較し、経営者が対応すべき事項を説明します。入力が終わった日ではなく、未解決項目がどれだけ残っているかまで確認すると、月次業務の完了状態をそろえられます。
決算・申告では何を追加で確認するのか
決算では、月次の確認に加え、売上や費用の期間帰属、棚卸資産、固定資産、未払・前払等を整理します。申告では、会計上の利益と税務上の所得の違いを検討し、申告書へ反映する作業が必要です。
実務では、決算予定日から逆算し、顧問先の資料提出、事務所の作成、税理士のレビュー、経営者への説明、申告・納付の確認を工程ごとに設定します。「申告データを送ったから完了」ではなく、受信結果や納付方法、期限を顧問先へ伝えたかまで記録します。受託範囲外の作業を含む場合は、契約や連絡方法を事前に整理します。
年間スケジュールと繁忙期の目安
個人の確定申告を多く扱う事務所ではその時期に、3月決算法人を多く担当する事務所では春の決算・申告時期に業務が集中しやすくなります。ただし、顧問先の決算期、申告期限の延長、受託する業務によって実際の予定は変わります。
下表は一般的な業務計画の例です。具体的な提出日や納付日は、対象年度・税目・休日等を確認して設定してください。職員の採用や休暇計画を立てるときも、「冬から春はすべて忙しい」とせず、顧問先別の工程を集計すると必要な人員を見積もりやすくなります。
| 時期の例 | 主な業務 | 準備すること |
|---|---|---|
| 毎月 | 記帳・残高照合・試算表 | 資料期限と未解決事項の管理 |
| 年末〜1月 | 年末調整・関連書類 | 対象者と必要資料の回収 |
| 2〜3月頃 | 個人の確定申告等 | 収入・控除等の資料確認 |
| 4〜5月頃 | 3月決算法人の決算・申告等 | 棚卸・残高確認・税理士レビュー |
| 各社の決算前 | 見込税額・資金繰り確認 | 納税資金と決算工程の共有 |
経営支援の仕事:数字を打ち手につなげる
経営支援では、試算表を渡して終えるのではなく、利益と現金の動きの違いを説明します。例えば利益は出ているのに預金が減る会社なら、売掛金、在庫、設備投資、借入返済を確認し、原因ごとに対策を分けます。
資料の例として、資金繰り表、借入返済予定、商品別の採算資料、月次予実表などがあります。税理士も財務・経営助言を担う場合があり、「税理士の巡回業務は経営支援ではない」と一律に線を引くことは適切ではありません。契約に応じて、面談で何を判断し、次回までに何を実行するかを記録します。
労務・法務等の判断が必要な場合は、資格と業務範囲に応じて社労士や弁護士等へつなぎます。対応できる範囲を明確にすることも、顧問先にとって重要な支援です。
AI・クラウド会計を使っても残る確認作業
連携機能やAIを使えば入力・集計の手間を減らせる可能性がありますが、連携範囲の不足、二重取込、税区分の誤り、推測による回答等には注意が必要です。導入時には、どのデータを取り込むか、どの処理を人が確認するか、異常時に誰へ戻すかを決めます。
顧問先情報を外部サービスへ入力するときは、契約、所内規程、守秘義務、サービスのデータ取扱いを確認します。出力の速さだけではなく、原資料との一致とレビュー記録を残せるかで運用を評価しましょう。
未経験者が最初に身につけたいこと
最初は、簿記の基礎、資料整理、表計算、顧問先への確認連絡などが土台になります。分からない取引を推測で処理せず、「事実」「未確認事項」「自分の考え」を分けて上位者へ相談する習慣が役立ちます。
教育では、仕訳の正解だけでなく、どの資料を見て判断するのかを説明します。月次業務の一部を担当し、レビューで指摘された理由を記録して次回に反映すると、確認作業を再現しやすくなります。
よくある質問
まとめ
会計事務所の仕事は、資料を数字にし、その根拠を確認して、申告や経営判断につなげることです。職員の作業と税理士の判断を分け、月次から決算・申告までのレビューを整えましょう。顧問先への財務説明を充実させたい方は、財務支援システムF+prusの案内をご覧ください。


















